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骨粗しょう症の予防・治療 お薬 その1

今回は骨粗しょう症の予防と治療に関するお薬の話をします。

 

皆さんは、骨は成長期にしか作られず、あとは年齢を重ねるごとに一方的に弱くなっていくというイメージを持たれているのではないでしょうか。

 

実は、骨はいくつになっても、古い骨を壊して新しい骨を作るというサイクルを繰り返しています。このサイクルのことを骨のリモデリングと呼びます。

 

古くなった骨を破骨細胞が壊し、その壊された部分に骨芽細胞が新しい骨を作ることにより、骨は若さや強度を保っています。

 

1年間でおよそ20%の骨がリモデリングされていると言われています。

 

この破骨細胞と骨芽細胞の働きがバランスよく保たれている間は、骨量もしっかり維持されるのですが、年齢を重ねたり、閉経を期に女性ホルモンが大きく減少したりするとバランスが崩れ骨粗しょう症になりやすくなります。

 

では、骨粗しょう症を治療するとき、どういうお薬が必要かといいますと、大きく以下の3つのタイプになります。

 

  • ① 骨を壊す働きを抑えるお薬(=破骨細胞の働きを抑えるお薬)
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  • ② 骨を作る働きを強くするお薬(=骨芽細胞の働きを促進するお薬)
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  • ③ 骨のリモデリングのバランスを整えるお薬

 

どのタイプのお薬を使うかは、年齢やこれまでの骨折の有無などを含め総合的に判断します。状況によっては採血で骨芽細胞や破骨細胞の働きを確認してからお薬を選択することもあります。

 

3つのタイプのお薬をもう少し詳しく説明していきます。

 

  • ①骨を壊す働きを抑えるお薬 (ビスホスホネート、SERM、デノスマブ)
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  • ビスホスホネート は、飲み薬、注射、点滴のタイプがあります。通常は飲み薬をお勧めしますが、飲み方が少し特殊なため、お薬の飲み忘れが多い方や認知症の方には注射をお勧めします。また飲み薬で効果が不十分な方にも注射への切り替えをお勧めしています。

    飲み薬の中では骨密度を上げる効果が高いお薬なので、骨密度が低い方に満足してもらいやすいお薬です。

     

    SERM は、女性ホルモンの骨専用タイプのようなお薬です。

    最初にお話ししたように、女性ホルモンが大きく減少するときに骨粗しょう症が悪化してしまいます。それならば女性ホルモンを補充することが、骨粗しょう症の根本治療になりそうですよね。

    実際に女性ホルモンを補充する治療方法は、骨密度を高め、骨折予防効果があります。しかし、乳がんリスクを上げてしまうこともあるため、当院では使用しておりません。女性ホルモンのお薬は、婦人科専門医の指導のもと使っていただくお薬になります。

    そして、このSERMは、骨に関しては女性ホルモンと同じように作用して、乳房においては乳がんリスクを下げるという素晴らしいお薬になります。

    しかし、骨密度を数値として上げる作用は、ビスホスホネートより落ちるため、比較的年齢が若く、骨密度が下がり始めたばかりの人によく処方するお薬になります。

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  • デノスマブ は、半年に1回注射をするお薬です。注射をしている間は、血中のカルシウムが低下しやすくなるので、定期的に採血で確認しながらカルシウムのお薬を併用します。抜歯をするときに注意が必要なお薬になるので、歯科受診歴などを確認しながら使用を検討します。
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    お薬の話をすると難しくなりますよね。

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    骨粗しょう症は、普段症状のない方にお薬を飲んていただくことになるので、どうしても治療の継続が難しくなりがちです。

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    ご自分の飲んでいるお薬が、どういうタイプのお薬なのか少しでも知っていただいて、治療意欲に繋がってくれたら嬉しいです。

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    長くなってきたので、②骨を作る働きを強くするお薬 ③骨のリモデリングのバランスを整えるお薬については次回以降にお伝えします。

     

    院長

2021年09月26日